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2007年07月 アーカイブ

2007年07月01日

アスベストの問題点

発ガン物質


 アスベスト繊維は非常に細い繊維なので、吸い込むと気管から気管支、さらに肺の一番奥の肺胞まで入り込んで、ガンを引き起こす恐れがあります。つまり、アスベストは発ガン物質なのです。

 アスベストによって起こるガンとして、はっきりしているものがあります。1つは肺ガンで、もう1つは悪性中皮腫といって、肺のまわりをおおっている薄い胸膜や腸のまわりの腹膜にできるガンです。

 肺ガンは様々な発ガン物質で起こりますが、悪性中皮腫の原因はアスベストと考えて、間違いはないでしょう。

相乗作用で効く


 アスベストと他の発ガン物質との相乗作用で、肺ガンを起こしやすくなることが知られています。アスベスト製品製造工場の労働者は一般の人の5倍、そのうちタバコを吸う人の場合は、53倍も肺ガンになりやすいのです。

 アスベストとタバコによる肺ガンの発ガン性は、掛け算で効いてきます。アスベストが特に問題になるのは、他の発ガン性物質との相乗作用があるからなのです。

 アスベストは身近な発ガン物質です。非常に細い繊維なので、空気中に飛散すると、なかなか落ちてはきませし、肉眼では見えず匂いもしないのです。自然界では、ほぼ分解しんはいので環境中にどんどん蓄積していくので、汚染は広がるばかりです。

 様々な病気で亡くなった方の肺の一部を取り出して薬品で溶かし、残ったアスベスト繊維を電子顕微鏡で調べると、1984年から1988年には99%の人の肺からアスベスト繊維が検出されています。

 アスベストが特に問題になるのは、こういった事実があるからなのです。

アスベストが使われている物

当時は「夢の物質」


 アスベストは天然の鉱物ですが、軽くて強く、糸に紡いだり、布に織る事も出来、断熱性、絶縁性にも優れ、酸やアルカリなどの薬品に強く、腐食しないという優れた性質を持っています。

 発ガン性が問題になるまで、「夢の物質」と言われ、産業用品から日用品まで、約3000種類もの用途があったのです。

日常生活の一部


 アスベストは紡ぐことができるので、アスベスト糸あるいはアスベスト布も大量に作られました。これらは、造船、製鉄、自動車を始め、熱に関係する様々な部門で活用されました。

 電線や管の被覆・充てん材、防火カーテン、防火幕、保温材、パッキンなどに使用されて、アスベスト布団なる保温材まで作られたのです。

 磨耗に強い性質を利用して、ブレーキなどの摩擦材としても使用されています。

自動車のブレーキライニング、クラッチフェーシング、バイクなどのディスクパッド、さらにエレベーターをはじめ各種産業機械のブレーキライニング、クラッチプレート、鉄道用のブレーキなどにも使われてきたのです。

また、アスファルトと混ぜて道路舗装、自動車底部の塗装、屋根、タイルなどに使われたり、接着剤や塗料にも充てん材として使用されました。トースター、電気オーブン、ヘアドライヤーなどの断熱材、電熱線の保持材にもアスベストが使われてきたのです。

しかし、アスベストの発ガン性が広く知られるようになると、アスベストの用途は大幅に制限されるようになりました。その結果、アスベストの約9割は建材に、約6%がブレーキなど摩擦材に使われています。

アスベスト含有建材の大部分は、コロニアルなどの商品名で知られる薄い屋根瓦と、石綿スレートです。

アスベストはいつから使用されたのか

古代より


 スーダンやケニアでは、石器時代に早くもアスベストを使用していた形跡があり、フィンランドでは紀元前2500年にアスベストの存在に気づいています。歴史時代に入ってからは、エジプト・ギリシア・ローマなどの書物に登場するようになりました。

それらによると、ギリシア・アテネ神殿のランプ・ローマ・ウェスタの神殿の「永遠の火」の灯芯は、ともにアスベストでした。そして、ナプキン・女性の髪飾り・上流階級の着衣、皇族の屍衣などにも用いられました。

わが国史上初めて、2cm角のアスベスト布製造に成功し、「火浣布」の名で発表したのは、江戸時代の奇才・平賀源内でした。しかし、すでに長崎ではオランダからアスベスト製大判ナプキンが渡来していました。

アスベストの工業利用が始まったのはイギリス産業革命期に突入しました。蒸気機関の保温・断熱材、ピストンのパッキンとして用いられて、注目を浴びました。

アスベストの紡績法が改良され、アスベスト布、アスベスト紙が大量生産されるようになるのと、カナダや南アフリカで大鉱脈が発見されるのは同じくらいの頃です。様々な諸国で新鉱脈が相次いで発見され、アスベスト大量使用時代の到来を告げたのです。

工業用原料として


工業用原料としてのアスベストの様々な特性がほとんど解明されつくしたのは、20世紀初頭で、アスベストはこれ以降、建設から自動車の製造まで3000種類ともいわれる工業製品に使われてきました。

特に戦争はアスベストを大量に必要とし、アスベスト産業に好況をもたらしたのです。なぜなら、数多くの軍艦や戦車、軍用機などが分厚い断熱材を必要とし、防毒マスクがフィルター用青石綿を必要としたからです。

敗戦後、日本の復興とともにアスベスト使用量も増え続けましたが、全世界のアスベスト産出量も、ピークの70年代後半には毎年500万トンにものぼりました。しかし、欧米各国が使用禁止に踏み切り、代替品へ移行してからは年間産出量も減ってきています。

毒性の判明

人体への危険性


 紀元前後のギリシア・ローマ時代、アスベスト鉱山で働く抗夫たちやその繊維を織る奴隷たちの間に、早くも肺疾患が多発していました。1世紀ごろには、動物の膀胱の透明な膜を防じんマスクとして使用しています。

 ランプの芯職人らが、防じんマスクで自衛しているとの記録も残されており、アスベスト災害が深刻かつ広範囲だったことを伺わせます。

 アスベストの工業用大量使用時代の到来は、現在も稼行中のカナダ・ケベック州の露天掘り鉱山群での本格的な採掘が始まった1877年に幕を開けました。しかし、1898年にはアスベストの人体への危険性を警告する論文が発表されたのです。

 その2年後にロンドンの病院で行なわれた死体解剖で、勤続10年目の織物工だった33歳の男性の肺内からアスベストの鋭く尖った小破片が摘出されました。織物工は生前、解剖医に同期の同僚9人が全員死んだと言っていたそうです。

アスベスト肺の命名


 1900年頃のイギリスのアスベスト織物工場では30代前半の女工たちの肺繊維症による死亡が相次ぎ、大問題に発展し、1927年に彼女たちの病名はアスベスト肺と命名されたのです。

 フランスでも1906年に、労働省の査察官が国内のアスベスト工場を調査、わずか5年間で50人が死亡した工場などを発見しました。

 1912年には、カナダも同様の調査を実施するなど、産業革命の伝播とともにアスベスト災害も急速に拡大し、それは看破できぬほどにすさまじかったのです。

毒性の判明(2)

肺ガンと悪性中皮腫


 アスベスト労働者の肺ガンと悪性中皮腫が世界で初めて報告されたのは、1935年でした。50年代に、アスベストばく露と肺ガンとの因果関係が確定し、60年代に悪性中皮腫との関連性が明らかになりました。

 1960年以降、アスベスト労働者の妻子や使用人、近隣住民らの悪性中皮腫等の報告が相次ぐようになり、アスベストは小量ばく露した者に対しても危険であることが分かりました。

 1964年にアメリカのセリコフ博士は国際会議の壇上で、20年以上アスベスト粉じんにさらされた労働者の87%が肺に深刻で回復不可能な損傷を受けていると報告しました。

 その後の研究で、アスベスト絶縁体を扱う労働者は他職種の工業労働者よりも、肺ガンで7倍、胃ガンで3倍もの高率で死んでいることを明らかにしました。

アスベストの脅威


 1978年に、米国政府は国民に向かってアスベストの脅威を警告し、第2次大戦以降、全土に1100万人のアスベスト被爆者がいること、その半数にガンによる死の危険性があると訴えました。

 それと同時に国内40万人に医師に手紙を発送し、アスベスト関連の病気の診断法と処置法について情報を提供しました。

 1980年代以降、北欧諸国は相次いでアスベスト使用を禁止し、その余波はヨーロッパ諸国にも広がってきています。

 法律で禁止しない国々の中にも、使用量が激減している国は多く、20万トンものアスベストを使用しつづける日本は情報鎖国状態から、まだ脱し切れていないのかもしれません。

日本での使用

世界各国の禁止


 ヨーロッパ、イギリス、フランス、米国、オーストラリアなどではアスベスト使用は禁止されています。しかし、日本はいまだに年間約20万トンものアスベストを輸入して使用しています。

 国際的には、国際労働機構(ILO)のアスベスト条約が発効していて、青石綿の使用を禁止しています。日本はこのILO条約さえも、いまだに批准していないのです。

もっとも、日本石綿協会は1985年に青石綿の使用を廃止し、1993年には茶石綿の使用を廃止したとしています。

こうした動きを受けて、1995年に労働省は労働安全衛生法施行令弟16条を改正し、青石綿あるいは茶石綿の使用、製造、輸入、販売、提供、を禁止しました。

ただ、使用禁止といっても新たに使用することを禁止するだけで、1995年以前に使用された青石綿あるいは茶石綿は放置されたままです。また、白石綿の使用はいまだに禁止されておらず、年間約20万トンも使われています。

白石綿の使用


 では白石綿は安全なのかというと、そうではなく日本の労働省も白石綿は発ガン物質と認定していますし、日本石綿協会も「健康への影響が最も少ない」の表現で、白石綿も健康に有害であることを認めているのです。

 アスベスト業界は「アスベストは管理して使用すれば安心」と主張しています。

しかし、アスベスト製品製造工場の中はともかく、アスベスト製品を取り扱う現場では、アスベスト繊維を飛散させないように厳密に管理することは、ほぼ不可能と言っても間違いではないでしょう。

アスベストのとれる場所・国

最大産出国はロシア


 アスベストは天然の鉱物繊維で、地下に埋まっています。アスベスト鉱山の多くは露天掘りです。アスベストを含む岩石を掘り出して、粉砕し、アスベスト繊維を取り出していくという方法が採られているようです。

 アスベストの最大の産出国はロシア共和国です。カナダがこれに次ぎ、ロシアとカナダで全世界の産出量の7割を超えているのです。南アフリカのケープ地方とトランスバール地方で青石綿と茶石綿が産出されていた以外は、すべて白石綿となっています。

 欧米諸国では、アスベストの使用禁止・削減が相次ぎ、アスベスト産出量は1976年をピークに減少しつづけています。

日本にもアスベスト鉱山があった


 日本にも小規模なアスベスト鉱山はありました。第2次世界大戦中、カナダからの輸入が途絶えたため、戦艦や戦闘機に必須の軍需物資アスベストを自給する必要に迫られ、全国のアスベスト鉱山開発が国策で進められてきました。

大部分は敗戦とともに閉鎖されましたが、北海道富良野市のノザワ鉱山だけは現在も操業しているようです。アスベストを新たに掘り出すことはせずに、一度アスベスト繊維を取り出したあとの鉱さいから、短繊維のアスベストを年産5千トン程度回収しています。

日本で使われているアスベストの約98%は輸入されています。主な輸入先は、カナダ、南アフリカとロシアです。近頃はジンバブエ、ブラジルからも輸入されているようです。

アスベストの検査

顕微鏡法

 吹きつけ材や建材などにアスベストが使用されているかどうか調べるには、X線回折による検査が決め手になります。X線回折法は、物質にX線を当てて反射されるX線の強さを調べる方法です。

 結晶構造を持つ物質の場合、X線を当てる角度を変えていくと、ある角度でX線が強く反射されます。その角度は結晶の種類によって異なるので、その角度からアスベストかどうか判定することができるのです。

空気中のアスベスト濃度の測定には、大きく分けて顕微鏡法とデジタル測定器法の2つの方法があります。

 顕微鏡法は、フィルター越しに一定量の空気を吸い込んでアスベスト繊維を集め、アスベスト繊維が何本あるか顕微鏡で数える方法です。メンブランフィルターという特殊なフィルターを使用するので、メンブランフィルター法とも呼ばれています。

 通常、位相差顕微鏡を使うのですが、この測定には問題が多いので外国では電子顕微鏡による測定が行なわれています。アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)は、小中学校のアスベスト処理後に電子顕微鏡による濃度測定を義務づけています。

 ただ、日本では電子顕微鏡による測定はまだ行なわれていないようです。

デジタル測定器法


 デジタル測定器法は、ファイバーエアロゾルモニターという測定器に空気を吸い込みながらレーザー光を照射し、繊維性粉じんを測定する方法です。

顕微鏡法の場合、測定結果が分かるのは、通常、翌日以降ですが、デジタル測定器法だと測定結果がすぐに判明します。アスベスト繊維だけを測定するわけではありませんが、使い方次第ではアスベスト工事中の濃度管理などに活用できます。

空気中のアスベスト濃度測定も、特殊な機器が必要なので、普通は測定機関に依頼することになります。費用は1サンプル2~3万円くらいです。

肺ガンとアスベストの関係

アスベスト繊維による肺ガン


 近年、肺ガンでなくなる方が急増し、ついに1993年に肺ガンが男性のガン死のトップになりました。また、女性についても肺ガンで亡くなる方が急増しています。

 肺ガンの原因というと、真っ先に思い浮かぶのがタバコです。しかし、アスベストも肺ガンを引き起こすことは間違いありません。

肺に吸い込まれたアスベスト繊維の多くは、肺などの臓器にささり、ため込まれ、20年~40年の潜伏期間の後に肺ガンを起こす可能性があります。肺ガンになる確率は、吸い込んだアスベスト繊維の量に比例すると考えられています。

まず問題になるのは、アスベスト製品製造労働者の他に、造船労働者、保温工、ボイラーマン、建設・解体労働者など、職業的にかなりのアスベスト繊維を吸い込む可能性のある人たちです。

タバコとアスベスト


 また、タバコとアスベストの発ガン性には相乗作用があります。タバコを吸う人がアスベスト繊維を吸い込むと、5倍も肺ガンにかかりやすくなるのです。

 アスベストの使用量が1950年代から急増していることと、アスベストによる肺ガンの潜伏期間が20年から40年であることも踏まえると、アスベストが肺ガン急増の一因であることは間違いないと思われます。

 アスベストは労働者の問題として取り上げられましたが、一般環境の中のアスベストも問題です。

 発ガン物質などの外からの刺激に対しては、子どもなどの若い細胞ほど鋭敏に反応するといわれているので、一般環境中におけるアスベスト濃度は多少を問わず問題だといえるでしょう。

悪性中皮腫とは

ガンの一種


 肺ガンと同じく、悪性中皮腫もガンの一種です。肺ガンは気管支や細気管支・肺胞域にできるガンですが、悪性中皮腫は肺の周囲を覆っている薄い胸膜や、小腸や大腸のまわりを覆っている腹膜、または心臓に出来るガンです。

 とても進行が早く、診断されてから1年以内に亡くなる場合がほとんどです。肺ガンなどと違って、手術によって治ったという例は皆無といってよく、今のところ有効な治療法は知られていません。

アスベストが原因


 悪性中皮腫の原因として知られているのは、アスベストとエリオナイトだけです。エリオナイトはトルコのカッパドキア地方の凝灰石に含まれる天然の鉱物繊維です。

 この地方では、エリオナイトを含む凝灰石を壁材に使用していたため、住民に高頻度で悪性中皮腫が発生しました。肺ガンと違って、悪性中皮腫の場合はタバコとの相乗効果もなく、日本で悪性中皮腫といえば、アスベストが原因と考えていいでしょう。

 このようにアスベストとの関係が明らかなので、少量のアスベストを吸い込んでも発病する可能性があることが判明しています。肺ガンと同じく、アスベスト繊維を吸い込んでから長い潜伏期間の後、発病します。

 本人がアスベストを扱ったことを知らなかったり、忘れていることもあります。まれな病気と考えられていたため、よく知らない医者も多いようです。

 胸部レントゲン写真で結核性胸膜炎のように、胸膜の間に水がたまったりした場合に、結核性の胸膜炎か中皮腫か、アスベストのばく露などを考慮した診断が求められます。

アスベスト肺とは

じん肺の一種


 粉じんを吸い込むことによっておこる肺の繊維化、増殖性変化を主体とする病気、簡単に言うと肺が弾力性を失って硬くなる病気が「じん肺」といわれるものですが、アスベスト肺も進行性のじん肺の一種です。

 アスベスト繊維を吸い込むと肺に入り、細い気管支や肺胞を刺激し、炎症を起こします。この炎症や繊維化は、アスベストを扱う職業から離れてアスベストを吸い込むことをやめても進行しつづけるのです。

 肺は広い範囲にわたって繊維化し、弾力性をなくして肺機能が低下していくのです。

 じん肺の初期は、自覚症状はほぼ無く、アスベスト肺も例外ではありません。ですが、だんだん進行してくると、風邪をひいても咳や痰がなくならず、慢性化してきます。

少々きつい仕事をした時や坂道を登るときなどに息切れをするようになり、遂には高度な呼吸困難になったり、心臓が弱ったりするようになります。

様々な病気を併発


 具体的にいうと、肺は空気中の酸素を取り入れ、身体の中で作られた炭酸ガスを体外に出す働きをしていますが、アスベストを吸い込んだことにより慢性の気管支炎を起こします。

 さらに、肺胞の壁が厚くなり、酸素と炭酸ガスの入れ換えができなくなってくるのです。そして、呼吸困難と酸欠状態が続くと、心臓に負担がかかり心不全が起こります。

 このような症状は、少しずつ起こってきます。アスベスト肺の治療法も、現在のところは解明されていません。

アスベストは発ガン物質

吸い込んだアスベストの量に比例


 アスベスト繊維を吸い込んでもガンにならない安全な濃度は無いと考えられていますが、1本でも吸い込んだら絶対ガンになってしまうというわけではありません。

 今では日本に住んでいる人はほとんどアスベスト繊維を吸い込んでいますが、全員がガンになるというわけではないのです。

 アスベスト繊維を吸い込んだ場合の発病率については、アスベスト製品製造労働者などのデータがあります。アスベスト肺に関しては、ある程度吸い込んでも発病しない安全な濃度があると考えられているのです。

 ですが、肺ガンや悪性中皮腫などのガンについては吸い込んだアスベスト繊維の量に比例して、ガンになる可能性が大きくなると考えられています。

 少量のアスベスト繊維を吸い込んだ場合の発ガン率は測定できないので、大量のアスベスト繊維を吸い込んだ場合のデータをもとに推定しています。

塵も積もれば‥‥


 色んな機関の推定を比較検討した研究を挙げてみます。次に挙げるのは、アスベスト繊維1本/ℓの空気を50年間呼吸したときの生涯発ガン率(対10万人)で、アスベスト繊維は白石綿と他のアスベスト繊維の混合です。

□EPA(米国環境保護庁)

 ・肺ガン  10  ・中皮腫  40  ・合計  51

□CPSC(米国消費者製品安全委員会)

 ・肺ガン  2~19  ・中皮腫  11~111  ・合計  13~130

□NRC(米国ガン研究所)

 ・肺ガン  18  ・中皮腫  69  ・合計  88

□ORC(カナダ王立オンタリオ委員会)

 ・肺ガン  17  ・中皮腫  55  ・合計  87
 
上の研究をもとにして計算すると、アスベスト繊維1本/ℓの空気を10万人が50年間呼吸したとすると、13人から130人が肺ガンあるいは悪性中皮腫で死亡すると推定されるのです。

アスベストによる被害

アスベスト労働者の惨状


日本でのアスベスト被害は、ごく一部しか分かっていないのが現状です。最初にアスベスト被害が出たのは、アスベスト製品を製造していた労働者です。

 第2次大戦前から、大阪近郊にはアスベスト紡織などの工場が集中していました。とてつもないアスベスト粉じんの中で、2000人以上のアスベスト労働者がマスクもしないで働いていました。

 1940年までに14工場650人のアスベスト紡織労働者を調査した結果、80人がアスベスト肺の疑いあるいはアスベスト肺と診断されています。勤続3年で異常が出はじめて、勤続20年以上の人は皆アスベスト肺でした。

 戦後になっても状況は改善ざれません。1956年から57年の調査で、大阪のアスベスト工場労働者330人のうち90人がアスベスト肺の疑いあるいはアスベスト肺と診断されているのです。

 このようにアスベスト労働者の惨状が明確になったために、ようやく1960年にじん肺法が制定されて、健康管理が義務付けられたのです。

アスベスト被害の多い職種


 アスベストの被害は、こうしたアスベスト製品製造労働者だけの問題ではありません。アスベストを運搬したり、アスベスト製品を取り扱う労働者にもアスベスト被害が続出しています。

 輸入されたアスベストの荷揚げ作業に従事して肺ガンになった横浜港の労働者が、1996年に労災認定されています。働いていたアスベスト保管庫では、粉じんが舞っていたそうです。また、造船労働者にも多数のアスベスト被害者がいるようです。

 大工さんやビル解体業の方も、アスベスト被害の多い職種です。すでにアスベスト肺、肺ガン、悪性中皮腫で労災認定を受けるケースが続出しているのです。現在、アスベストの約9割が建材に使用されており、今後さらに被害が拡大する恐れがあるのです。

アスベストによる被害(2)

アスベストによるガン


 アスベスト肺以上に問題になっているのが、肺ガン、悪性中皮腫などアスベストによるガンです。アスベストの発ガン性が認知され、労働者の発ガン予防対策が法律で規定されたのは、1971年のことです。

 胸膜の悪性中皮腫だけで毎年100人以上が亡くなっているのです。しかも、その後は10年間に3.8倍に増えています。日本の悪性中皮腫の原因は、アスベスト以外には知られていないのです。

 肺ガンの場合は、タバコによるものか、アスベストによるものか区別するのは極めて困難です。しかし、肺ガンは近年急激に増えているのです。1993年には肺ガンが男性のガン死亡率のトップになっており、アスベストと無関係とは言い切れないようです。

 1994年までにアスベストによる肺ガンあるいは中皮腫で労災認定された労働者は合計210名です。胸膜の悪性中皮腫で毎年100人以上亡くなっている方のほとんどは労災によるものと思われますが、悪性中皮腫の労災認定は年間10件程度です。

各国の犠牲者


 日本では医者も労働者もアスベストに関する認識が低いので、悪性中皮腫で亡くなっても労働申請しない場合が多いようです。

 日本より早くからアスベストを大量に使ってきた欧米諸国では、すでに膨大な数の犠牲者が出ています。

 ニコルソン博士達は、1940年から1979年までに米国で2750万人の労働者が仕事で大量のアスベストにさらされ、1982年にはアスベストによるガンだけでも年間約8200人が死亡すると推定しています。

 フランスでも年間の中皮腫死亡者は1000人を超え、2020年頃には3倍に達すると予測されています。フランスの研究者は、肺ガンによる死亡者を中皮腫死亡者の2倍と推測し、2020年頃には年間約1万人がアスベストによる病気で死亡すると推定しています。

石綿による健康障害

健康障害の種類


 石綿(アスベスト)による健康障害は、石綿を取り扱う作業に従事してから、長い年月を経て発症します。では、どのようなものがあるか挙げていきましょう。

石綿(アスベスト)肺

 石綿粉じんを大量に吸入することで生じる「じん肺」の一種で、酸素と炭酸ガスの交換を行なう肺胞に石綿繊維が沈着し、肺胞壁に繊維化を生じることによって、その機能が損なわれる疾患

肺ガン

 肺ガンになる危険性は、石綿粉じんの吸入量が増すほど高くなり、その危険性はタバコを吸わない人の肺ガンの危険性を1とすると、タバコを吸う人は10倍、石綿にさらされる人は5倍、タバコを吸って石綿にさらされる人は約50倍とする報告もあります

中皮腫

 肺を取り囲む胸膜、胃腸などの臓器を覆う腹膜などにできる悪性腫瘍で、石綿粉じんの吸入との関係が指摘されています。石綿に最初にさらされた時から、30~50年後に発症すると言われています。

胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)

 肺を覆う胸膜の壁側にできる部分的な肥厚で、これのみでは肺機能の障害などは伴いませんが、過去に石綿粉じんを吸ったことの医学的所見として重要視されています。

良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚

 比較的高濃度の石綿粉じんを吸入することで、数年~40年後に胸腔内に浸出液が生じる場合を良性石綿胸水と呼びます。

 胸水が治る過程で臓側と壁側の、両方の胸膜の癒着が起こり、広い胸膜の肥厚をもたらします。何度も胸水貯留を繰り返すと、びまん性の胸膜肥厚が進行し、肺機能の障害をもたらすことがあります。

石綿に係わる規制

使用・製造が禁止されているもの


 まず、使用・製造等が禁止されている石綿は、アモサイト(茶石綿)・クロシドライト(青石綿)・アモサイトまたはクロシドライトをその重量の1%を超えて含有する物の3つです。

 また、製造等が禁止されている石綿製品は、石綿セメント円筒・押出成形セメント板・住宅屋根用化粧スレート・繊維強化セメント板・窯業系サイディング・クラッチフェーシング・クラッチライニング・ブレーキパッド・ブレーキライニング・接着剤などです。

 ただし、石綿の含有量がその重量の1%以下の物を除きます。

石綿障害予防規則


 平成16年10月の労働安全衛生法施行令の改正で石綿含有製品の製造などが禁止され、一部の製品を除いて、石綿の使用がほぼ全面的に禁止となり、今後の石綿ばく露防止対策は建築物など、解体作業時の石綿のばく露対策に重点が移りました。

 そして、解体などの工事における石綿のばく露防止対策に、一層の徹底を図ることなどから石綿に関して独立した規則として「石綿障害予防規則」が平成17年2月に公布され、同年7月に施行されています。

健康管理について


 現在、石綿の取り扱い作業に従事している者、あるいは現在はその作業に従事していないが以前、石綿の取り扱い作業に従事していた者に対しては、胸部X線検査などにとる健康診断を実施しなければいけません。

 また、石綿の取り扱い作業に従事した者で、両肺野に石綿による不整形陰影、または胸膜肥厚斑(胸膜プラーク)がある者は、離職の際または離職の後に住所地の都道府県労働局長に申請することで、健康管理手帳が交付されます。

 健康管理手帳の交付を受けると、年に2回無料で健康診断を受けることが可能になります。

他の環境汚染との比較

優れた材料が起こした環境問題


 アスベストは、耐熱性や耐食性などがある極めて優秀な材料です。ですが、有害性をあらかじめチェックすることなく使用を拡大させてしまい、結果として環境問題を引き起こしてしまったのです。

 この他にも同じような例が多くあります。例えば、ポリ塩化ビニル、PCB、フロンなどが挙げられます。これらに共通しているのは、安全で同等の性能を持ち、コストを上げない代替品がなかなか見つからないことです。

 工業用などに使われる材料は、有用な部分だけに注目して普及したものなので、これからも同じような環境問題が起こることが予想されます。

 また、生活のまわりに存在する有害な複数の材料に曝露していた場合、原因物質の特定は困難になります。さらに悪条件が重なると、複数の病気が重複して発病することも考えられます。

 では、その環境問題を生じさせた材料などを挙げていきましょう。

ポリ塩化ビニル

 電線被覆材、壁材やフローリングなど建材、配管被覆材、自動車内外装部品など多くの用途に使われています。

 ですが、廃材などを800℃以下の低温で焼却処理するときにダイオキシンが発生することが問題となり、国際的に使用が制御されています。

 燃焼の条件によっては、塩化水素ガスの発生があり、急性的な毒性及び機器などへの腐食も起こします。

 アスベストと比べると、材料そのものが毒性をもっているものではなく、燃焼することによって問題となる点が違います。

他の環境汚染との比較(2)

優れた材料が起こした環境問題(2)


PCB(ポリ塩化ビフェニル)

 電気絶縁性に優れており、金属に対して安定で不燃性、耐熱性であることから、コンデンサーや変圧器の絶縁溶剤、潤滑油などに使われました。

 ですが、カネミ油症事件で肝臓障害、色素沈着など有害性が問題となり、1972年に製造を中止しました。現在は「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」の第一種特定化学物質に規定され、輸入、使用も禁止されています。

 アスベストと同様に、材料そのものが有害であることから、存在確認が極めて重要ですが、PCBの存在調査では正確な量がなかなか把握できず、問題となりました。

 さらに、法的な処理方法が確立するまでに時間がかかったことで、保存を余儀なくされた企業にとって大きな負担となりました。

フロン類

 フロン類とされているものは、CFCsや,HFCsがあります。フロンは商品名ですので、海外ではこの名称はあまり使用されていません。欧米では、商品名のフレオンとして一般的に知られています。

 フロン類は化学的に安定な物質で、無色、無臭、不燃性で有害性が低いなどの性質をもつ材料でスプレー、冷房、冷凍、冷蔵用の冷媒、プラスチックの発泡剤など多くの用途に使用されました。

 しかし、フロン類によって成層圏でオゾン層を破壊することが確認され、国際的に法律によって強制的に排除されました。優秀な材料の利用が、人類の存在自体を危うくしたといっても過言ではありません。

木造住宅とアスベスト

化粧石綿スレート


 木造住宅でアスベストが使用されている可能性が高いのは、屋根瓦です。古くから使われてきた和風瓦は粘土を焼いたもので、アスベストは使用されていません。

 しかし、近頃の一戸建て住宅の屋根には、コロニアルあるいはカラーベスト、フルベストなどの商品のついた薄い平板状の瓦が使用される例が増えています。

 この薄い平板瓦の大部分は、アスベストをセメントで固めて、表面で覆ったもので、JIS(日本工業規格)では「住宅屋根用化粧石綿スレート」と呼ばれており、重量の10~15%はアスベストです。

 平均的な一戸建て住宅の屋根を化粧石綿スレートでふくと、約1000枚になります。重量が約3トンですから、アスベスト含有率を15%とすると、屋根の上に約450キログラムのアスベストが乗っていることになるのです。

 化粧石綿スレートはアスベストをセメントで固めてありますから、そのままの状態ではアスベストが飛散することはありません。ですが、切ったり割ったりすると、アスベストが飛散します。

 化粧石綿スレートは風雨にさらされている間に表面の着色層がはがれて、劣化してアスベストが飛散します。最近は日本でも酸性雨が多くなってきていますが、酸性雨はセメントをとかすので、化粧石綿スレートの劣化を早めてしまいます。

サイディング材


 木造住宅でよく使用されるもうひとつのアスベスト建材が、サイディング材と呼ばれる外壁材です。以前はモルタル吹き付けが主流でしたが、工期短縮・コスト削減を考慮して、サイディング材を張り付ける場合が多いようです。

 サイディング材で最も多いのは窯業系のものですが、窯業系サイディング材にはアスベストが多用されてきたのです。ただ、近頃はアスベストを使用しない窯業系サイディング材が増えてきています。

アパート・ビル・マンション等のアスベスト

耐火被覆材


 マンション、事務所ビルなどの非木造建物の骨格は、鉄骨あるいは鉄筋コンクリートでできています。鉄骨は火事になった時に熱で曲がってしまい、人が避難できなくなる恐れがあります。

 これを防ぐために、鉄骨には耐火被覆が義務づけられています。この耐火被覆材にアスベストが使用されてきました。

 鉄骨の耐火被覆はアスベストをセメントと混ぜて吹き付けるのが一般的でした。これが吹き付けアスベストです。ただ、この作業は大量のアスベストが飛び散るので、1975年にアスベスト吹き付けは原則的に禁止されたのです。

 とはいえ、アスベスト吹き付けも完全に禁止されているわけではないので、現在でも行なわれているという話もあります。

ビータイル・石綿スレート


 アパート、マンション、事務所ビルや工場では、アスベスト含有建材も多く使われています。こうした建物では室内や廊下の床にピータイル、ビニアスタイルと呼ばれる四角形の薄いタイルを敷き詰めてあるのがよく見られます。

 このピータイルには1986年までアスベストが使用されてきました。現在製造されているものには含まれていないようですが、1986年以前に製造されたビータイルはアスベストを含んでいると考えていいでしょう。

 廊下やトイレの天井、工場・倉庫などの屋根や外壁には、石綿スレートが使われます。石綿スレートはアスベストをセメントで固めたもので、アスベスト含有率は10~30%にもおよびます。

 屋根材には波形スレート、室内では平板スレートが使用されています。屋根材として使用された石綿スレートは酸性雨や紫外線などの影響で劣化しやすく、アスベスト飛散が問題になっています。

学校のアスベスト

吹き付けアスベスト


 1987年、小中学校などの吹き付けアスベストが社会問題化しました、文部省は早速吹き付けアスベストの調査を指示し、対策に乗り出しました。現在では、小中学校の吹き付けアスベスト対策はほとんど完了したと言われているようです。

 ですが、実際には吹き付けアスベストが残っている小中学校が数多くあります。

 なぜなら、吹き付けアスベストの調査がいい加減だったからです。アスベストを含有する吹き付け材の商品名は最低でも38ありますが、文部省がリストアップした商品名は3つだけだったのです。

 文部省調査の対象になったのは教室だけで、給食室、廊下などは調査対象外だったのです。そのため、調査が終わった後に吹き付けアスベストが発見されるケースが各地で相次ぎました。

「封じ込め」と「囲い込み」


 また、吹き付けアスベストの約2割は取り除かずに、「封じ込め」または「囲い込み」で済ませたことにも問題があります。

「封じ込めは」薬剤でアスベストを固める工法で、「囲い込み」はアスベストを吹き付けた天井などを天井板で見えなくします。いずれも、吹き付けアスベストは残ったままなのです。

大学の場合は、もっと深刻です。理科室の実験室などにアスベストが吹き付けられていることが多いのですが、対策があまり進められていないのです。

概して、対策がとられているのは吹き付けアスベストのみです。大量に使用されているアスベスト含有建材は、未処理のまま放置されているのです。

駅のアスベスト

石綿スレートの劣化


 電車や汽車のプラットホームの屋根は、木製、金属製のものもありますが、波形石綿スレート製のものが圧倒的に多いのは事実です。石綿スレートはアスベストをセメントで固めたもので、アスベスト含有率は10~30%と高率です。

 ドイツでは石綿スレートの劣化について詳しく研究されています。その結果、

○酸性雨や二酸化硫黄の作用で表面が腐食して劣化し、アスベスト繊維がむきだしになる
○壁材より屋根材の方が、劣化が早い
○腐食の速度は雨の酸性度と大気汚染物質の濃度によって左右される
○飛散したアスベスト繊維は、原料のアスベスト繊維と同程度の発ガン性を示す
○劣化した石綿スレート1㎡あたり1時間に100万本から10億本、平均5600万本のアスベスト繊維が飛散する

などということが分かっています。

 石綿スレートの劣化は日本でも見られます。古い屋根材は表面がボロボロになり、手で触っただけでアスベスト繊維が飛散します。酸性雨でセメントが溶け出し、スレート板が薄くなっています。

 ドイツの調査結果をそのまま日本にあてはめると、1枚の石綿スレートから1日に平均27億本、年間約1兆本ものアスベスト繊維が飛散していると考えられるのです。

プラットホームにも


 プラットホームの屋根以外にもアスベストが使用されています。渡り階段の壁、トイレの天井などに平板石綿スレートがよく使用されています。

たまに、石綿スレートを遊び半分で蹴破る人がいますが、石綿スレートを割るとアスベストが飛散するので、わざわざアスベスト繊維を吸い込んでいるようなもので非常に危険です。

ビル解体現場・新築現場

ビル解体時


 耐火性を高めるために、ビルにはアスベストが多く使用されています。ビルを解体する場合のアスベスト対策は労働安全衛生法で次のように規定されています。

○事前に吹き付けアスベストだけではなく、全てのアスベスト含有製品の使用状況を調査・記録する
○吹き付けアスベストがある場合には、労働基準監督署(労基署)に届け出る
○アスベストの飛散を防止しながらアスベストを除去する

ですが実際には、アスベスト対策をしないまま解体してしまう場合が多いようです。

阪神・淡路大震災の被災地では、アスベストを除去しないまま解体するケースが相次いだため、3月末頃からビル解体費だけでなく、吹き付けアスベスト除去費も公費で負担するようになったのです。

 ですがその後も、吹き付けアスベストを除去しないまま解体するケースがあとを断たないのが実情です。また、ゼネコンの現場責任者が吹き付けアスベストを見ても、アスベストと判別できないとさえ言われているのです。

新築現場


 新築現場からもアスベスト繊維が飛散している例が多いようです。住宅屋根用化粧石綿スレート、石綿スレートをはじめ多くのアスベスト含有建材がいまだに使用されています。

 現場で建材を切ったり打ち付けたりするとき、大量のアスベスト繊維が飛散します。労働省は除じん装置付きのこぎりなど、新築時のアスベスト飛散防止対策マニュアルを作成しています。

 ですが、大手のところでも新築時のアスベスト対策は何もしていないケースが結構あるようです。

ドライヤーとベビーパウダー

ヘアードライヤー


 アスベストは熱に強く、絶縁性も優れているので、ドライヤーやトースターなどの絶縁材として使用されてきました。ある調査によると、ヘアードライヤーの28%、トースターの23%、電気オーブンの12%にアスベストが使われていたそうです。

 ヘアードライヤーではヒーター保持材、熱シールド材としてアスベストが露出状態で使用されていました。送風口からのぞいて見て、ヒーター保持材が白色のものはアスベスト
の可能性があるとしています。

 トースターの場合は、ヒーター取り付け部材とポップアップ型トースターのヒーター保持材として使用されました。ヒーター取り付け部材は隠れた場所にあり、ヒーター保持材は露出状態でした。

 上から覗いて見て、ヒーター保持材が白色のものはアスベストの可能性があるということになります。

 電気オーブン、電気ストーブ、電気こたつのヒーター取り付け部材にも使われていましたが、露出はしておらず、電子レンジ類への使用例はなかったそうです。

ベビーパウダーにもアスベスト


 1986年、ベビーパウダーにアスベストが含まれていることがマスコミで報道されて、大きな問題になりました。ベビーパウダーの主成分はタルクと呼ばれる鉱物の粉末ですが、これにアスベストが混入していたのです。

 地中でタルクができる条件がアスベストの場合とよく似ているため、タルクと一緒にアスベストが生成していることがあります。厚生省が各メーカーに対して、アスベストが検出されないことを確認したタルクだけを使用するよう通知を出しました。

 タルクはベビーパウダーのほか、化粧品、製紙、農薬、医薬品、磁器硝子、ゴム製品製造など様々な分野で使用されているのです。これら全てのタルクについてアスベストを検査しているのかどうかは不明です。

水道水とお酒

アスベスト水道管


 これまでに様々な材質の水道管が使用されてきました。その中にアスベスト水道管があります。これはアスベストをセメントで固めて管状にしたものです。

 幅広く使用されてきましたが、衝撃に弱く、自動車の交通量の多い所ではその重みでつぶれたり、新潟地震ではあちこちでアスベスト水道管が破裂し断水しました。アスベスト水道管が劣化するとアスベスト繊維がはがれてきます。

 1988~1989年に東京都衛生研究所が都内の水道水を透過型電子顕微鏡で検査し、水道水1ℓ中にある7500~9万3000本のアスベストを検出しています。こうしたことからアスベスト水道管をライニング鋳鉄管などに交換する工事が各地で行なわれています。

 ビル屋上の高架水槽が水道水質悪化の原因になるので、厚生省は水道の圧力を上げて高架水槽を不要にするため、補助金を出してアスベスト水道管の取り替え工事を推進しています。

お酒のアスベスト


 また、日本酒やワイン醸造の最終段階でアスベスト製フィルターが使用されてきました。1976年から国税庁と業界団体がアスベストフィルターの使用を自粛するよう指導したようです。

しかし、東京都立衛生研究所の調査で日本酒から大量のアスベスト繊維が検出され、その後も使用されていたことが明らかとなりました。1985年、日本酒造組合中央会は全面不使用の通達を出しています。現在、使用されていないかどうかは分かりません。

アスベスト繊維を吸い込むとガンになる可能性がありますが、アスベスト繊維を飲んだ場合の影響については今のところ、定説がないようです。

外出時における危険性

高速道路


 環境庁の調査によると、幹線道路の近くでは大気中のアスベスト濃度が高くなっています。路肩に近いほどアスベスト濃度が高くなっているので、ブレーキから飛散したものと思われます。

 高速道路の路肩では幹線道路より濃度が低いのですが、料金所周辺では高くなっています。これは自動車、バイクのブレーキなどから飛散したアスベストの影響と見られます。

高速道路ではブレーキをかける回数が少ないのですが、料金所では必ずブレーキをかけるので、アスベスト濃度が高くなるのだと考えられます。

道路にも


 トラックの積荷からもアスベストが飛散します。国道26号線のある交差点では、空気1ℓ中に約7~11本のアスベスト繊維が検出されました。

国道26号線は大阪から和歌山への主要な産業幹線道路で、1時間あたり1600台の交通量の約2割が廃棄物等を運搬する大型車でした。積荷の産業廃棄物からアスベストが飛散したものと考えられます。

 道路にもアスベストが使用されました。舗装用のアスファルトにアスベストを混ぜていたことが知られています。

 また、岩手県では道路骨材にアスベストの一種アンソフィライト(直閃石)が混入していたため、冬季に使用されたスパイクタイヤで道路が削り取られ、アスベストが飛散しました。

 そのため、1992年にスパイクタイヤが禁止され、アスベスト飛散は少なくなった
と報告されています。国道については道路粉じんを除去して埋めたそうですが、県道・市道の道路粉じんは未処理のまま放置されているようです。

ゴミ処分場でのアスベスト

飛散性のアスベスト廃棄物


 ゴミ問題が深刻化し、東京・日の出町の「ゴミ紛争」をはじめ、ごみ処理施設や処分場に反対する住民運動が全国各地で巻き起こっています。ゴミ処分場が環境を汚染し、地域住民の健康や生命に大きな危害を及ぼしていることは、明白な事実です。

 大改正された廃棄物処理法が1992年から施行されました。改正後は飛散性のアスベスト廃棄物は「特別管理産業廃棄物」に指定され、密封または固化して収集・運搬、埋立処分されるので、アスベスト飛散は少ないという見方もあるようです。

様々な問題


 しかし、いくつかの問題点があります。

 まず、改正廃棄物処理法で定められたアスベスト廃棄物の定義から製品として最も量の多いアスベスト建材が抜け落ちていることがあげられます。

 アスベスト建材は、建設廃棄物、木くず、あるいはガラス・陶磁器くずとして中間処理場で粉々に壊された後、あるいはそのまま廃棄物処分場に持ち込まれています。

 また、吹き付けアスベストを除去しないままのビルが横行していることも問題です。阪神・淡路大震災の後、被災地では吹き付けアスベストを除去しないままビルを解体する例が相次ぎ、アスベスト汚染が問題となったのです。

 これは被災地に限らず、東京都内でも吹き付けアスベストを事前に除去してから解体しているのは1割~2割のみです。

 そして、吹き付けアスベストやアスベスト建材が廃棄されて終着駅のゴミ処分場に辿り着くまでのその過程の中にも問題はあります。収集運搬に伴う積み替え保管所では、集めた廃棄物を大型トラックに積み替えるときにアスベスト繊維が飛散します。

 建設廃棄物などを破砕・分別する中間処理施設でも、大量のアスベスト繊維が飛散します。積み替え保管所、中間処理施設は全国に数千箇所あるといわれているのです。

 アスベスト汚染の危険性を縮小していくためには、環境団体をはじめ周辺住民による実態解明や問題提起が重要になってきていると言えるでしょう。

アスベスト工場のアスベスト

アスベストの飛散


 アスベスト製品を製造する工場あるいは事業場は、全国に約300以上あります。工場数は年々減っていますが、大阪府に全工場の1割以上が集中しています。工場の所在地は各都道府県に情報公開請求すれば分かります。

 工場のアスベスト飛散防止対策は非常にいい加減だったようで、環境庁の調査によると石綿スレート等製造工場の集じん機の排出口で空気1ℓ中に最高2万本ものアスベスト繊維が検出されました。

 集じん機のフィルターが機能せず、アスベストを周りに撒き散らしていたのです。集じん機の管理不備のほか、工場の出入り口や窓が開いていたなど、色んな原因で工場からアスベストが飛散していたのです。

大気汚染防止法の改訂


 アスベスト製品製造工場の近くに住んでいた人が死亡する例が相次いだため、1989年に大気汚染防止法が改訂されました。

□アスベストは特定粉じんと規定され、アスベスト製品製造機は特定粉じん発生施設に指定され、届出が義務付けられる

□事業者は半年に1回、工場敷地境界のアスベスト濃度を測定し、記録を3年間保存することが義務付けられる(従業員50人未満の工場は免除)

□工場敷地境界のアスベスト濃度の規制基準10本/ℓが設けられ、事業者は規制基準を守る義務が課せられる

□都道府県知事は汚染状況を常時監視する義務を負うと同時に、立入検査の権限を与えられる

大気汚染防止法改訂によって、果たしてアスベスト撒き散らしは改善されたのでしょう
か。1992年に都道府県等が112工場・事業場の敷地境界でアスベスト濃度を測定した結果、7ヶ所で規制基準を超過しており、改善を指導したとのことです。

 このように一定の成果は上がっているものの、依然としてアスベストを撒き散らしている工場はあるようです。

アスベスト鉱山地帯と蛇紋岩採石場

アスベスト鉱山跡地


 アスベスト鉱山跡地も蛇紋岩採石場もアスベスト汚染の発生源となっているようです。第2次世界中、アスベストの輸入が途絶えたため、政府は全国各地でアスベスト鉱山開発に乗り出しました。

 アスベストは軍艦、戦闘機などの断熱材などとして必須の軍需物資だったのです。最大のアスベスト鉱山は、北海道富良野市にあるノザワ鉱山でした。敗戦後、アスベスト鉱山は次々と閉鎖されていきました。

 日本のアスベスト鉱山跡地は、59ヶ所以上あるそうです。これらのアスベスト鉱山跡地はいったいどうなっているのでしょうか。

富良野市山部には、ノザワ鉱山をはじめとする3つのアスベスト鉱山跡地があります。いずれも草木も生えないままの山として放置されてきました。山肌のあちこちに蛇紋岩が転がっており、それが風化・崩壊を繰り返していきます。

そして露出したアスベスト繊維が空気中に飛散し、あるいは雨水や雪解け水に運ばれて、脇を流れる川の河川敷に大量にたまっています。川の水が増水するたびに、下流に運ばれていくのです。

長崎県の三和町にもアスベスト廃鉱山跡地があります。この跡地は一部は整地され、病院や町役場が建てられています。廃石が近くの港湾施設に使用されたこともあったようです。

また、熊本県松橋町では、廃鉱山・廃工場跡地周辺の住民の中に胸膜肥厚が多発していることが報道されて問題になったことがあります。いずれの県もアスベスト汚染の実態は明らかではありませんが、調査をする必要があるのは言うまでもありません。

蛇紋岩地帯


日本の蛇紋岩地帯は、北海道から九州まで幅広い範囲に分布しています。蛇紋岩は、砂利石や骨材として道路工事や建設用材に多く使用されています。蛇紋岩の採掘に伴うアスベスト汚染の実態は既に環境庁の調査によって明らかになっています。

アスベストの被害が大きい職業

アスベストを扱う職業


 アスベストの被害は、仕事の直接の対象としてアスベストを扱う職業の人に多い、ということは確実に言えます。アスベスト鉱山労働者、アスベスト製品製造工場労働者、アスベスト吹き付け労働者、大工、建築物解体労働者、港湾労働者などが挙げられます。

 その他に、その仕事を成し遂げるためにアスベストを用いる職業の人にも被害が発生しやすいといえます。造船労働者、断熱・保温労働者、ゴム製品製造労働者などがこれにあたり、その被害は深刻なものです。

アスベストを扱わない職業も


 さらに、アスベストを扱わない職業に携わる人にも、その職場環境にアスベストが含まれているために被害が発生しています。

ボイラー運転管理・整備労働者、発電労働者、プラント労働者、船の乗組員(船員、軍人)、学校労働者(管理作業員、教員)などが該当しています。

 四国には火力発電所の労働者で、定期検査時にはボイラー室内は断熱材・絶縁体として使用されたアスベストの粉じんが充満している状態で、さらに修理作業に伴い、新たにアスベストが粉じんとなって飛散する、という状況で40年に渡って働き、在職中に悪性中皮腫で亡くなったというケースがありました。

 イギリスやオーストラリアでは、学校の教員がアスベストスレートや暖房ダクトのために悪性中皮腫になって死亡しています。

 ここに列記した職業は、実際に被災者が報告されているものですが、他の職業もアスベストによる危険とは無関係とは言い切れません。

特にこれから被害が顕在化する可能性がある職業として、廃棄物処理に携わる労働者、俳優など舞台芸術関係者、消防士などが考えられます。

アスベストを防ぐには

アスベストの不使用


 アスベストを吸わないための最善の方法は、アスベストを使用しないようにすることです。建材をはじめ、大部分のアスベスト製品について、ノンアスベストの代替品が販売されています。

 どうしてもアスベストを使用せざるを得ないときは、なるべくアスベストを吸い込まないような対策が必要になってきます。

 その対策として、アスベストを取り扱う工程を密閉してしまうことが挙げられます。それも出来ないときには「局所排気装置」と「除じん装置」を用いて、作業場内のアスベスト濃度をできるだけ低くします。

 新築工事などでアスベスト建材を使用する場合の対策について、労働省は「石綿含有建築材料の施工における作業マニュアル」を発行し、除じん装置付き電動丸のこの使用、メーカーでのプレカットなどの対策を打ち出しています。

防じんマスクなど


 アスベストを吸い込まないようにするには、防じんマスクも必要です。アスベストは非常に細い繊維なので、ガーゼマスクでは役不足です。国家検定を受けた防じんマスクを使用することが義務付けられています。

 米国ではアスベスト除去工事労働者のアスベスト被害が憂慮され、捕集効率の高い携帯型の送気マスクが使われていますが、これが最適でしょう。

 また、衣服についたアスベストを作業場外に持ち出さないよう、専用の保護服を着用し、作業場から離れる前に全身を洗浄する必要があります。シャワーに用いた水は、アスベストをこしとってから排水しましょう。

 こういった具体的な方法については、労働安全衛生コンサルタントが相談に応じています。最寄の労働基準監督署に尋ねてみるといいでしょう。

アスベストの検査方法

健康診断


 職業としてアスベストを扱っていることがはっきりしている場合、特定化学物質等障害予防規則に基づく健康診断を受けることになっています。過去に取り扱ったことのある人も同様です。

 いずれも6ヶ月以内ごとに1回、定期に行なうことになっています。じん肺法に規定されている「粉じん作業」に該当する場合には、じん肺法に基づく健康診断も受けることになっています。

 じん肺法が規定する粉じん作業とは、

 石綿をときほぐし、合剤し、紡績し、紡織し、吹き付けし、積み込み、若しくは石綿製品を積層し、縫い合わせ、切断し、研まし、仕上げし、若しくは包装する場所における作業

というものです。もしも、会社から受診するように言われていないとしたら、会社に要求できます。

 つまり、健康診断の項目をそれ以上増やしても、あまり効果はないと考えられます。むしろ、こうした健康診断を事業者任せにしないで、労働者の信頼のおける専門医に実施してもらうことや、健康診断の結果をありのままに本人に伝えてもらうこと、日頃から気軽に健康相談ができることなどが、より重要だといえます。

いろいろな対策を


 また、同じような職業に就いている労働者同士で交流を進め、病気の予防に努めたほうがいいでしょう。そして、不幸にして病気になったとき速やかに労災申請ができるように、作業の態様や時期をこまめに記録していくのもいいと思います。

 ちなみに喫煙の習慣がある人は、できる限り控えたほうが健康のためです。なぜなら、アスベストとタバコの両方を吸うと、その相乗効果で肺ガンにかかる可能性が高くなってしまうからです。

アスベストによる労災補償

様々な給付


 労災補償(労働者災害補償保険)給付には、治療のための「療養補償給付」、休業中の生活保障のための「休業補償給付」、1年半の治療を経ても治癒せず、傷病等級第一級から第三級に該当する場合の「傷害補償年金」。

また、後遺障害がある場合の「障害補償給付」、在宅で介護を要する場合の「介護補償給付」及び死亡した場合の「遺族補償給付」と「葬祭料」があります。

 これらの給付を受けるためには、請求書を労働基準監督署長に提出する必要があります。災害の発生状況などに関する事業主の証明と、医師など診療担当者の証明が必要となります。

専門機関に相談を


 なお、一般の労働者の場合には事業主が労災保険に加入しますが、いわゆる「一人親方」の場合には特別加入の途がひらかれています。

 アスベストによる病気は通常、潜伏期間が長いので、退職後に発病したり、以前に勤務していた場所でアスベストを吸い込んだ人が発病したりすることが往々にしてあるようです。

 また、労災申請をしようと思ったときは、勤めていた会社がなくなっていることも珍しくありません。肺ガンや悪性中皮腫など、存命中は治療や看護に追われて、本人が亡くなってから遺族が労災補償を請求することも考えられます。

 ともあれ、労災認定を受ける手続きはきわめて煩雑で、とりわけ病身には辛いところがあります。こうした困難を乗り越えて、後に続く人を確実に救済するためにも、専門の相談機関の協力を得たほうがいいと思われます。

建物のアスベストの調べ方

建物の設計図書を調べる


 鉄骨造り、鉄筋コンクリート造り、あるいは鉄骨鉄筋コンクリート造りの建物にはアスベストが吹き付けられていることがあります。吹き付けアスベストの有無を確認するためには、2つの方法があるのです。

 まず、建物の設計図書を調べる方法です。矩計図、平面図、あるいは内部仕上表に「吹き付け」とか「アスベスト吹き付け」などと明記してあれば、しめたものです。

ただ、吹き付けがあるのに「吹き付け」と明記してない場合や、設計図書には「ロックゥール吹き付け」と書いてあるのに実際はアスベスト吹き付けであったり、その逆の場合もあります。

 建築関係者が「こんな所にあるはずがない」と言っていたモルタルの二重壁の間に青石綿が吹き付けられているのが発見されました。設計図書の調査だけではなく、実際の建物を実施検査することが重要です。

建物の実地検査


 もうひとつの方法は、建物の実地検査です、吹き付けがあるかどうか、天井や壁を検査します。天井板が張られている場合は、天井板の奥も検査しなければいけません。原則として、鉄骨は吹き付けあるいは耐火被覆板で耐火被覆されているはずです。

 吹き付けがあれば、分析業者などに依頼してサンプルを採取し、分析してもらいます。一般的に分析は、X線回折を行い、アスベストに特徴的なピークがでるかどうかで判断します。

 アスベストの吹き付けは1975年に禁止されたので、それ以降に建てられた建物にはアスベスト吹き付けは無いと考えている人もいるようですが、そうではありません。

 1976年以降もロックゥール吹き付けに5%以下のアスベストを混ぜた場合があるので、主成分はロックゥールでもX線回折で検査をしてもらったほうがいいでしょう。

吹き付けアスベストの処理

むき出しの場合は注意


 吹き付けアスベストはアスベストにセメントと結合材を混ぜてあります。年月とともにセメントや結合材が劣化し、アスベストが飛散するようになります。飛散の程度は吹き付けアスベストの劣化状況、室内の空気の流れ、湿度によって異なります。

 アスベストを吹き付けてある部屋でクーラーを運転したなら、大量のアスベスト繊維が飛散してしまいます。

 吹き付けアスベストがむき出しになっている場合には、アスベスト繊維が飛散していることは明らかなので、何らかの処理が必要になります。ただ、鉄骨の吹き付けなど天井板や壁板が張ってあり、むき出しになってない場合にはすぐに処理する必要はありません。

3つの処理方法


 吹き付けアスベストの処理には3つの方法があります。

除去

 吹き付けアスベストを取り除く

封じ込め

 アクリル樹脂などの飛散防止剤を吹き付け、浸透させて、吹き付けアスベストを固める

囲い込み

 吹き付けアスベストの室内側に天井板などを張り、室内へのアスベストの飛散を防ぐ

 除去はは根本的な対策です。封じ込め、囲い込みは一時的な処置といったところでしょうか。当座の費用は除去よりも低価格ですが、建物を解体するときには再び除去しなければならず、結局はコスト高になってしまいます。

 小中学校の吹き付けアスベスト処理の8割はは除去で、封じ込めと囲い込みがそれぞれ1割程度と言われています。米国環境保護庁(EPA)は、極めて狭い面積の吹き付けの場合にのみ、囲い込みを認めています。

 どの方法をとるにしても、アスベスト飛散防止対策が必要となるので、専門業者に依頼する必要があります。

アスベスト除去工事の融資制度

2つの融資制度


 吹き付けアスベスト除去工事は、吹き付けアスベスト1㎡当たり2~3万円かかると言われています。融資制度には、「建築物の防災改修に係る融資」と「公害防止資金融資」の2つがあります。

建築物の防災改修に係る融資


 広い意味での建築物の維持保全に関心が高まり、阪神・淡路大震災の経験もあって1995年4月からこれまでの融資条件が大きく変わり、建物の「維持保全計画が適切であること」を必要条件とする代わりに、所有者が申請できるようになりました。

○対象

 建築基準法12条1項に規定されている定期報告の対象となる建築物

○手順

 ・建築物の所有者が維持保全計画を見直しまたは策定
             ↓
 ・建築物の所有者が、防災改修工事の内容が融資基準に適切である旨の証明申請を特定行政庁に行なう
             ↓
 ・特定行政庁は審査し、適切な場合には証明書を交付する
             ↓
 ・建築物の所有者は、証明書を金融機関に提出して融資を申し込む

公害防止資金融資


 ばい煙、粉じん、臭気、騒音、廃液などによる公害の発生を防止しるため、また工場の緑化のための工事資金融資を、利子補給あるいは保証料補助の形で、中小企業の負担を低く押さえられるよう支援するため、5つの制度があります。

 東京都以外での自治体でも、同じく融資制度があるようです。

○対象

 アスベストを使用する建築物解体等の工事を行なうとき、アスベストをあらかじめ除去するために必要な資金の融資として、最高2000万円まで銀行融資を斡旋する

○手順

 ・担当窓口に相談する(目的の場所、事由、規模、内容など)
              ↓
 ・担当官現地立ち会い調査をして、「公害」となるかを認定する
              ↓
 ・認定があれば、区の窓口に「アスベスト除去作業」の届出
              ↓
 ・資金融資の申請を担当窓口に行なう→審査→融資決定
              ↓
 ・この間、貸出窓口銀行との打ち合わせ、融資の決定を待ち、融資を受ける

ただ、信用保証協会の保証が必要となります。

建材の見分け方

「a」マークの表示


 1975年から、アスベストを重量比で5%を超えて使用している製品の梱包にはアスベストの表示が義務付けられています。1995年4月から、表示義務はアスベストを1%超えて使用しているものに拡大されています。

 ですから、新築工事の場合には建材の梱包を見れば、アスベストを使用しているかどうか判明します。

日本石綿協会は1989年から、加盟企業が生産するアスベスト建材1枚1枚に「a」マークの表示を求めています。新築の場合、あるいはすでに使用されている建材でも、「a」マークがあればアスベストが使用されています。

 ですが、日本石綿協会に加盟していない建材業者もあるため、「a」マークがないからといってアスベストがないとは限りません。

 アスベストが使用されている建材は不燃建材、難燃建材などの認定を受けています。認定された建材は1枚1枚に認定番号が印刷してあるので、認定番号を「耐火防火構造・材料等便覧」とつき合わせてアスベストの有無を調べることも可能です。

既に使用されている建材


 駅のプラットホームの屋根に使用されている波形スレートとか、1985年以前の床のピータイルはアスベストが使われていると思ってもらっていいでしょう。

 屋根の薄い瓦も商品名が「カラーベスト」「コロニアル」「フルベスト」「ニューフルベスト」なら、ほとんどアスベストが使用されています。

 アスベストが使用されているかどうかを確かめるためには、建材をX線回折で検査する必要があります。X線回折でアスベストの結晶構造が確認され、顕微鏡で繊維が確認されれば、アスベスト製品と判断されます。

ビルを解体するときは

事前調査が必要


 ビルを解体する前に、まずアスベストの事前調査が必要となります。1995年から労働安全衛生法に基づく特定化学物質等障害予防規則(特化則)が改正され、第38条の10により、アスベスト製品の調査と記録が義務づけられています。

 吹き付けアスベストだけでなく、アスベストを1%超えて含有する製品は全て調査・記録の対象になります。

 吹き付けアスベスト、アスベスト含有建材のほか、空調用ダクトの保温材、たわみ継手、パッキン、上下水道など配管のエルボ部などの保温材、アスベスト水道管なども調査が必要です。

アスベストの除去


 アスベスト製品がある場合、そのまま解体するとアスベスト繊維が飛散してしまいますので、解体する前に除去しなければいけません。

 アスベスト製品を除去する際には、アスベスト飛散防止対策が必要です。特化則によって、特定化学物質等作業主任者の選任、原則として負圧・集じん機の稼動、防じんマスク、作業記録などの対策が要求されます。

 また、アスベスト建材を除去する時にも吹き付けアスベスト除去と同じく、飛散防止で湿潤化した上で負圧・集じん機を稼動させ、飛散したアスベスト繊維を吸い取る方法が各地で実施されているようです。

 なお、ビル解体に先立って吹き付けアスベストを除去する場合には、労基署への届出が義務付けられています。また、東京都と兵庫県では知事への届出も必要となります。

阪神・淡路大震災でのアスベスト問題

ビル解体時のアスベスト


 兵庫県南部地震で、17万棟以上の建物が全半壊しました。その大部分は古い木造家屋で、アスベストはほとんど使用されていませんでした。アスベストが使用されていたのはビルで、1400棟以上が倒壊したと伝えられています。

 被災地で問題となったのは、壊れたビルを解体するときのアスベスト飛散です。ビルを解体するときには、まずアスベストが使用されていないか調べて、アスベストが使われていなければ、飛散防止対策を講じてアスベストを除去し、その後にビル解体となります。

 しかし被災地では、アスベストが使用されているかどうかをよく調べず、飛散防止対策もしないまま、あちこちでビルを解体したため、アスベストが飛散してしまったのです。

ずさんな飛散防止対策


 アスベスト建材などの飛散防止対策がほとんど行なわれていないことも、アスベスト汚染の大きな要因になっています。

ビルを解体するとき、アスベスト建材の有無を調査せず、天井や壁にアスベスト建材が使用されていても、そのままハンマーで割り、床のピータイルは剥がさずにコンクリートと一緒に粉々に解体している場合がほとんどです。

これは明らかな労働安全衛生法違反です。ゼネコンなどの認識が不十分な上に、アスベスト建材等の除去費用は公費で支出されないため、違反工事が横行しているのです。

ビル解体によるアスベスト飛散で最も被害を受けるのは、防じんマスクもせずに解体工事に従事している労働者です。10年、20年後に肺ガン、悪性中皮腫などの被害が発生する恐れがあります。